UBIが“グラフィック詐欺”を反省。なぜ劣化が起こるのか

「Watch Dogsで犯した過ちから学んだ。」

発表された新作ゲームの美しいスクリーンショットや映像が、発売が近づくにつれて徐々に劣化していく、いわゆる“グラフィック詐欺”や“スクショ詐欺”。この問題にUbisoftのCEO Yves Guillemot氏が言及し、今後のタイトルは、実機でゲームが稼働しているプレイアブル状態でのお披露目を約束しました。


サイバーパンクなオープンワールドゲーム『Watch Dogs』は、2012年の発表当初はその複雑な照明効果やリアルなキャラクターアニメーション、詳細な気象シミュレーションなどによる美しいグラフィックと映像エフェクト、そして“実在の街・シカゴでのハッキング”という斬新なコンセプトで大いに注目されました。

しかし発売が近づくに連れて徐々にグラフィックの質が低下。「誇大広告」と批判の声まで出始めます。発売後にもその声は大きくなるばかりで、Ubisoftは最終的にグラフィックの低下を公式に認めました。

グラフィック検証

以下は、ゲームの分析に定評のあるDigital Foundryによる、E3でのお披露目映像と実際のゲーム映像の比較。30秒辺りの最初の比較シーンで、当初の重厚な雰囲気が損なわれてしまったことが分かります。

Was Watch Dogs Graphically Downgraded? E3 2012 vs PC Ultra Comparison

以下は画像による比較。

Watch Dogs Graphics downgrade

Yves Guillemot氏はE3 2015で、この問題はプロジェクトの複雑さが原因だったとの見解を示しました。新たなテクノロジーを使った新ブランドとしては質の高いものを送り出せたとしながらも、シームレスなマルチプレイヤー、モバイルやタブレットとの連携など、新規IPに斬新な要素を一挙に詰め込み過ぎたようです。今後のタイトルは、実機上でプレイアブルであるかの確認をチームに徹底周知するとしています。

なぜ劣化するのか

もちろん、開発側は良いイメージを消費者に植え付けるために“グラフィック詐欺”を企てるわけではありません。恐らく。開発当初のプレリリース版は、開発チームの理想・目指すところであり、何らかのイベントでお披露目した後に、実際に開発が進む中での仕様変更やマルチプラットフォーム化の影響、リソース不足などで、“結果的にダウングレードしてしまう”とされています。

この「結果的にダウングレード」が問題となってしまうのは、消費者が最初に受けた「非常に良いイメージのまま購入」してしまうこと。そのイメージがムービーだったのか、高価なPCでのプレイなのか、CS版でのプレイなのか、開発中のものなのか製品版のものなのかは、コアゲーマー以外は知ったことではありません。

数ヶ月から数年もの期間をかけるゲーム開発が、当初の予定通り行くことはまずあり得ないことですが、一般の消費者側からすれば観たままのゲームが出来ると思うのは当然のこと。

もちろん「ゲーム自体が楽しければ構わない」「多少画質が下がろうが気にしない」という消費者も多いでしょうが、今回のUbisoftの決定は、「観たままのゲームをやりたかった消費者側の視点」に立ったうえので判断と言えそうです。

ダウングレード問題で訴訟に

もちろんこれまでのゲーム史でやり玉に挙げられたのは『Watch Dogs』だけではなく、『Dark Souls 2』や『Forza Motorsport 5』、『Far Cry 4』、『Metal Gear Solid 4』など多数のゲームが“劣化認定”を受けています。

特に『Killzone 2』や『Aliens: Colonial Marines』は発表時よりも大きく劣化したとされ、米国で集団訴訟に発展。『Aliens: Colonial Marines』は米セガが、125万ドル（当時のレートで1億2500万円）を支払うことに合意しています。

開発側が「理想のコンセプト映像」をトレイラーとして一般公開してしまう慣習がどうにかなれば解決できるような気がするのですが、大規模なゲームイベントでの発表スケジュールとの絡みもあるため、なかなか難しいのかもしれません。

via Anonymous Thanks!
EAA!! ではみなさんからの情報提供をお待ちしています。

Source: Theguardian