先日開かれた世界最大級のLANパーティ「QuakeCon 2018」で、『Fallout 76(フォールアウト 76)』に関する新たな情報が公開されました。
QuakeCon 2018に登場したのは開発ディレクターのクリス・マイヤー氏、プロジェクトリーダーのジェフ・ガードナー氏、そしておなじみゲームディレクターのトッド・ハワード氏の3名です。冒頭でE3にて公開されたオフィシャルトレーラーが流れた後に質問に解答していくという流れで進行しました。
Fallout 76 – オフィシャルE3トレーラー
『Fallout 76』ではプレイヤーがNPCに置き換わる
最初はまず『Fallout 76』というゲームはどのようなものなのか、というシンプルな質問で始まりました。これに対し、トッド氏は以下のように答えています。
「ファンの皆さんも御存知でしょうが、『Fallout 76』はFalloutユニバースで展開されるオープンワールドRPGです。システムやサバイバル面などで多くの特色があります」
「これまでのゲームとの最大の違いは、そこで出会うキャラクター全てがゲームをプレイしている本物の人間だということです」
その後、トッド氏は80%は慣れ親しんだ『Fallout』からの要素だが、残りの20%は全く違うということを前置きした上で、これは『Fallout』ファンのためのゲームなのかと?いう質問に以下のように答えています。
「そうだと思いますが、実際には分かりません。様々なタイプのFalloutファンがいて、非常にたくさんの要素がFalloutにはあります。ある人はただ探索することが好きで、また、ある人はキャラクターをビルドしていくのが好きだといった具合に。ストーリーが好き、戦闘が好き、クラフトが好き...様々な要素が存在するのです」
「本作で明らかに存在しないのは、ストーリーをプレイヤーに語ってくれる人工の特定のキャラクター、NPCの存在です。NPCの存在はたまらなく好きですし、多くのファンが同じ気持ちなのも理解しています。ただ本作ではその要素が本物のプレイヤーに置き換えられています」
「プレイヤーがNPCとなるのです。そして、様々な面で私達の作るNPCを超える面白い存在になってくれることを期待しています」
前回のE3のインタビューからも窺えたことですが、やはり『Fallout 76』をオンライン化する事に関しては内外から様々な意見が出たようです。それでもオンライン化した理由について、トッド氏は次のように述べています。
「実際にその世界に住んでるような気持ちになれることはスタジオにとってとても重要なことです。ビデオゲームだけど、ゲームをプレイしているときは、まるでそこが現実であるかのように感じて欲しいのです」
PERKカード
QuakeCon 2018では様々なゲームの新映像が公開されましたが、『Fallout 76』も例外ではありませんでした。お馴染みVault-Tech社製の、ややブラックな表現が多目のショートアニメーションが公開されています。タイトルは「Being a Better You(よりよいアナタになる)」で、オンライン化に伴って変更されるキャラクターシステムについて説明されています。
Fallout 76 – Vault-Tec Presents: Being a Better You! Perks Video
「核戦争前は、各々が与えられた手札のなかでベストを尽くし役割をこなしていれば良かったが、核戦争後はその手札も完全にシャッフルされ、シンプルな日々に分かれを告げなければいけない。普通の労働者も同時に、農家、アイスクリーム屋、スパイ、拳法の達人、原子物理学者にならなければいけない」
確かに『Fallout 4』でも戦闘だけでなく、建築や資源管理、住民のための装備調達など、様々な仕事をこなす必要がありました。
そこで登場するのが“S.P.E.C.I.A.L.”と“PERK”です。レベルアップごとに強化したいS.P.E.C.I.A.L.にポイントを割り振って、その後取得したいPERKを選ぶ仕様になっています。
ここまでであれば従来のシステムとあまり変わりがないと感じるかもしれませんが、今作では新たにコストの概念が付け加わります。PERKの強力さに応じてコストが設定されていて、その合計が決められた値を下回るようにPERKを組み合わせなければなりません。前作までは習得条件を満たしてさえいればいくつでもPERKを取得出来ていたので、大きな変更です。
上の画像を見る限り、選択した回数分だけ、該当するS.P.E.C.I.A.LでのPERKに使用可能なポイントが増えていくようです。レベルアップごとに取得できるカードにランダム性はないというので、選択したS.P.E.C.I.A.Lごとに固定されているのかもしれません。
また、カードを重ねて既に取得したPERKを強化することも可能で、何をどの順で強化し、どのような場面でどのPERKを装備するのかという戦略が重要になりそうです。なお、強化されたカードはコストも増えるので注意が必要。
さらに、レベルアップごとに貰えるPERKカードとは別枠で、ボーナス的存在のPERKカードパックなるものが存在することも明かされています。これは4枚のカードがランダムに排出される作りになっています。
トッド氏はPERKカードパックについて、プレイヤーにより柔軟に幅広くPERK選択を行ってもらうためのものだと説明しています。レベル10までは2レベルごとに、10以降は5レベルごとにパックが貰えるようです。
なお、レベル50に達するとS.P.E.C.I.A.Lポイントは貰えなくなる、すなわちコストには上限があるようですが、カードは手に入り続けます。トッド氏はキャラクターの成長を常に楽しむため仕掛けで、おきまりのPERK構成だけでなく、環境に適応するため、プレイ前には考えもしなかったPERKでプレイを楽しめるようになると述べています。
PvPについて
PvPを望まないプレイヤー
続いて話が転がったのはPvPのシステムについて。出会うキャラクターが全員本物の人間なのであれば、時には戦闘に発展することもあるでしょう。オンライン化する『Fallout 76』の根幹を担う部分とあって、説明に非常に多くの時間が割かれていました。
まず、特筆すべきはPvPを行わない事を選択出来るということです。トッド氏によると『Fallout 76』のPvPには承諾システムのようなものが存在しているということです。
『Fallout 76』では、他の誰かを撃った場合に最初はごくわずかなダメージしか与えられないように制限されています。プレイヤーは撃たれたときに無視をするか応戦するかの選択ができ、もし応戦して交戦状態になると通常のダメージを与え合うことが可能になります。無視をし続けるとわずかなダメージしか喰らわないので基本的には逃げることができるという仕組みになっています。
応戦した場合にはお互いの同意の上でのPvPとなり、その結果相手に倒された場合にも面白い仕掛けが施されています。『Fallout 76』ではPvPにおいて負けた場合、自分を倒した相手に復讐をするかを選択でき、復讐が成功すると2倍の報酬を受け取れるという「リベンジシステム」ともいえる仕組みも存在しています。
指名手配システム
ただ、他プレイヤーの攻撃を無視し続けたとしても、わずかとはいえダメージを喰らうということは、キルされる可能性は依然として残りますし、ストレスも溜まることでしょう。この点に関してBethesdaは、指名手配システムを設定しています。これは、PvPを望まないプレイヤーを無理やりキルした場合、キルした側のプレイヤーは殺人の指名手配犯扱いになり、そのワールドに居る全プレイヤーのマップに赤い星マークで表示されるというもの。
加えて三重の施策として、指名手配されたプレイヤーは、敵をキルしてもキャップや経験値が手に入らない設定になっています。さらにさらに、これがトドメだと言わんばかりに、指名手配されたプレイヤーのマップには他のプレイヤーが表示されなくなり、かけられた賞金は指名手配プレイヤー自体のキャップから支払われます。
まとめると以下の通り、著しいハンデを背負うことになります。
- 全マップに映し出されるのであらゆるプレイヤーの標的になりうる
- キャップや経験値などの利益は一切得られない
- 自分のマップに他のプレイヤーが表示されなくなる
- かけられた賞金を自腹で支払う羽目になる
トッド氏曰く、「クソ野郎を面白いコンテンツに変えた」とのことで、PvPを望まないプレイヤーをキルするプレイヤー、つまりクソ野郎にとっては「クソ野郎扱いされる名誉」以外の利益は存在しないということです。思わぬ誤射により敵対してしまうことを防ぐための「Pacifist Flag」なる設定まで存在しており、「クソ野郎」が射線に急に入ってくることでPvPを強要する事態にも対応。徹底した平和主義者保護の姿勢が垣間見えます。
PvPを望むプレイヤー
とはいえ、別に全てのプレイヤーがPvPを望まないわけではありません。攻撃されたから、あるいは以前やられていてリベンジしたいからという理由でPvPに挑むのは決して少数派ではないと思います。では、PvPに自ら進んで挑み、惜しくも負けてしまったプレイヤーも含めて、デスしたプレイヤー一体どれほどのペナルティを受けるのか、というのも気になる点です。
これに対し解答したのはクリス氏で、彼が言うには、プレイヤー失うのはジャンク、つまり武器の強化や建築に用いられる資材のみであり、武器やパワーアーマー等はロストしないとのことです。
ジャンクのロストに対しても救済策があり、プレイヤーがスタッシュと呼ばれる保管庫にジャンクを預けておけば影響はありません。また、このスタッシュは他のプレイヤーからはアクセスできないため、帰ってきたら根こそぎ奪われていたという事態も防げます。
そして、やられた後のリスポーンについても質問が飛びました。PvPのみならずPvEでも常にやられる可能性はあります。これに対して解答したのはジェフ氏。曰く、リスポーンポイントは自分で選択可能で、アンロックするごとに選択できるポイントが増えるそうです。最寄りのポイントとVault76のエントランスは無料で移動できて、それ以外の場所へのリスポーンは、やられた場所からの距離に応じて少々のキャップを支払わねければいけないと彼は言います。
クラフト
プレイヤーに過度なストレスをかけたくない、という考えはクラフトのシステムからも垣間見えます。すでに公開されている情報の通り、『Fallout 76』には核弾頭が存在します。敵が攻めてきます。当然敵プレイヤーが攻めてくることもあります。建築物が破壊されることはすでにE3で判明していたため、プレイヤーが気になるポイントです。
これに対して答えたのはクリス氏です。『Fallout 76』にはブループリント(設計図)システムがあると言います。話からまとめると、キャンプの様々な施設の配置等を保存し、再配置や繰り返しての使用が可能なものが「ブループリント(設計図)」となります。
これによりキャンプ自体の移動も楽になります。次の引っ越し場所を探した後は、現在のキャンプの荷物をまとめて、それを次の場所に設置するという流れが簡単に行えるようになっていることが強調されていました。なお、ブループリントが他のプレイヤーと共有できるかどうかはまだ明らかにされていませんが、建築を素早く行うシステムとして、戦闘好きのみならずクラフト好きも注目すべき要素になりそうです。
総括:新たな『Fallout』へ
ネガティブな姿勢からポジティブな姿勢へ
ここまでPERK・PvP・クラフトという3点に絞って紹介してきました。今回、様々なシステムの詳細が公開されましたが、総じてプレイヤーにはポジティブな動機と姿勢で様々なコンテンツに積極的に参加して欲しいという考えで作られていることを感じます。
例えばPvPとPvEで別々のステータス曲線が存在していて、PvPでは互いの武器の強さなどがある程度近くなるように設計されているのも、まさにその考えからのアイデアだと感じます。レベルと装備で不利な相手だからといってとりあえず逃げるのではなく、「報酬のキャップにボーナスが付くから試しに戦ってみよう。負けても大した被害はない」といった楽観的な姿勢で楽しむプレイヤーが増えることを望んでいるようです。
執拗にハラスメントを繰り返すプレイヤーを排除するのではなく、指名手配犯というコンテンツに昇華させる試みも同じような理由だと考えられます。厳重なルールに従わせるのではなく、「PvPを望まないプレイヤーをキルしたい?OK、ただ強烈なペナルティがあるから、自己責任でね」といった感じに。抜け穴を必死に探させるのでなく、最初から許容してしまうというのはなかなか面白い発想です。
そもそも、RPG要素やPvE要素といった『Fallout』シリーズだからこそのウリは、PvPなどのオンライン要素と元々の相性が良いとは言えません。ソロという閉じられた世界だからこそ成り立っていたストーリーやバランスが一挙に崩れ、『Fallout』である意味がなくなってしまうのではないか。『Fallout 76』に寄せられた数々の不安や不満はその心配に根付いています。
シリーズファンの強烈な“反応”はBethesdaも重々理解しているらしく、トッド氏は「Reddit(訳註:海外のコミュニティサイト)を見ないようにしています」と冗談めかして話しています。
this is why I don't go on reddit.
今回の発表会も、多くはその不安の解消のためのものでした。「PvPもPvEもクラフトも、決して悪意を持ってプレイするユーザーが得をしてしまうようにはなっていないよ。だから、安心してプレイしてね」といったメッセージをファンに届けたいことがひしひしと感じられます。
もちろん、全ての不安が解消したわけではありません。例えば、指名手配システムはどの程度継続するのか?というのはかなり気になるところです。ログアウトしてすぐログインして解除されてしまうのでは、実質ノーリスクで嫌がらせが出来てしまい指名手配の意味がありません。まだまだ気になる点は山積みです。発売後にもめまぐるしく改善されていくことでしょう。
オンラインだからこそ生まれる予測不可能なゲーム
一方、それだけの手間暇を覚悟した上で、なおオンライン化の決断を下した背景も少しだけ見ることが出来ました。つまり、生きた人間がプレイヤーだからこそ生まれる様々なドラマやエピソード、そういった良い意味で不安定な要素をゲームに取り入れようとするBethesdaの決意の程です。
あえてNPCを排除したのもその意図に則ったものでしょう。しっかりとしたストーリーラインを構築するために必要不可欠なNPCですが、その行動はどこまでいっても結局決まりきったものに過ぎません。必要最低限のNPCを配置して保険をかけることも出来たはずですが、あえてそれをやらなかったBethesda内では理想とするゲームイメージがしっかりと共有されているのだと思います。
実に50分を超えるカンファレンスでしたが、解消した疑問と同じだけ新たな疑問が出てくるような錯覚を覚えます。それくらい謎と不安に満ちていて、それと同じくらいの期待をかけたくなる『Fallout 76』。『Fallout』シリーズの新たな形だけでなく、ひょっとするとゲームの新たな形も模索しているかもしれないBethesdaのこれからに注目しましょう。
さらに詳しい内容は以下の動画で見ることができます。
QuakeCon 2018 | Fallout 76 and Fan Q&A
『Fallout 76』の発売日は11月14日で、対象プラットフォームはPlayStation 4,Xbox One,PC。
Source: Bethesda Softworks YouTube
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コメント
コメント一覧 (5件)
今作は公式は非公式MODを是とするのかどうかで
PC版かPS4版かを決めたい
MODのPCか人数のPS4か
まあPC版の人口が少ないわけではないけど
そんなにオンラインやりたいのならESOみたいに世界観引き継いでるけどまったく別のMMOゲームみたいな方式を取らなかったのはなんでなんだろう…
レイダーとヒャッハーしたい気持ちはあっても、わざわざ他のプレイヤーとやりたいわけではないんだよなあ。
FOにしてもウィッチャーにしても、PvPに疲れた時にやってる層としては、何故核戦争直後の美味しい題材をこれに切ったのかが未だに疑問です。
まあ、だからこそのナンバリング外なんでしょうけど。
まあドンマイ
かなC