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Ubisoftの『Rainbow Six Siege(レインボーシックス シージ)』競技シーンで活躍するプロチーム・Fnatic。今回はFnaticシージ部門の最初期からのロースターであり、チームのキャプテンでもあるMag選手にインタビューの機会をいただきました。プロ選手となったきっかけや、使っているPC。さらにはステージ1の振り返りなど、さまざまなテーマからお話をうかがっています。

CONTENTS

Mag選手インタビュー

[独占] レインボーシックス シージ:FnaticキャプテンMag選手が日本のファンへメッセージ(日本語) - EAA

Fnaticの本拠地はイギリスのロンドンですが、シージ部門の選手やスタッフはほとんどがオーストラリアで活動しています。彼らは現在、日本や他のアジアのチームとともにAPAC Northディビジョンという枠組みの中で世界の舞台を目指して戦っており、ステージ2での活躍にも注目が集まっています。

Fnaticシージ部門のロースター(写真:SiegeGG

Mag選手(@MagnetR6)がキャプテンを務めるFnaticシージ部門は、2月に行われた世界大会シックスインビテーショナル2020にも出場。世界のベストチームと対戦し、大会当時の優勝候補に挙げられていたTeam EmpireやG2 Esportsといった強豪を倒しベスト6でフィニッシュ。アジア地域のヒーローとなり、日本のシージコミュニティも歓喜に沸きました。

EAA!!編集部では今回Mag選手にインタビューの機会をいただき、さまざまなテーマからお話をうかがいました。

プロになったきっかけ

EAA: 本日はインタビューの機会をいただき本当にありがとうございます。ではまず、シージの競技シーンのことをあまりよく知らないという方に向けて簡単な自己紹介をお願いします。

Mag: 僕はMag。シージのプロチームFnaticでキャプテン兼IGL(司令塔を務めるプレイヤー)をやっています。試合ではフレックス・プレイヤーとして色んなオペレーターを使い、さまざまな役割をこなしています。

Fnaticシージ部門のキャプテンMag選手

EAA: ありがとうございます。とろで最近「Magnet」から「Mag(まぐ)」に改名しましたが、なぜ名前を変えたんですか?「net」の部分はどこへ?

Mag: MagnetからMagに変えた理由の1つは、まわりのみんなは僕のことをMagと呼ぶからです。他にも、これから先のことを考えると僕自身のイメージとしてはこっちの方がいいと思ったからです。それでMagnetからMagになりました。

EAA: Magというのもとてもかっこいいですね。そもそもMag選手がシージをプレイし始めたきっかけはなんだったんでしょうか?

Mag: トレーラー映像で興味を持って、発売直後からプレイしまくっていました。元から対戦ゲームが好きで、どんなことでも一番になりたい人間だったんです。かなりの数のランクマッチをこなしていたんですが、だんだんそれじゃ満足できなくなって、ランクマよりもさらに高いレベルで戦いたくなった。

[wpap service="with" type="detail" id="B08512CDDS" title="レインボーシックス シージ YEAR5デラックスエディション - PS4"]

そういうわけで国内のトーナメントに出場し始めたんですけど、これが本当に楽しかった。結果的にオーストラリアのベスト2チームになって、Dizzle(Fnaticシージ部門のコーチ)のチームに加わることになりました。プロとしてのキャリアがスタートしたのもその頃ですね。一日中ランクマを回すのではなく、チームの最初期の部分に関わっていったんです。チーム活動って楽しいんですよ。

EAA: 最初からAPACのベスト選手になれるという自信は持っていましたか?

Mag: そうですね…。シージには最初から本気で打ち込んでいたんですが、世界のプロリーグの試合を見たり、他のストリーマーの配信を見たり、ランクマも回しているうちに、僕は視覚的な能力が優れていることに気付いて、それで自分も最高の選手になりたいと思うようになったんです。

最高のチームに加えてもらって、競技選手としては最高の環境をもらって、他の素場らしいチームの中でも最高のチームにいたおかげで、APACのトーナメントでプレイするチャンスを手に入れられました。

シックスインビテーショナル2018APAC予選の結果。当時のMagはMindfreak所属(Liquipediaより)

僕にとって初めてのAPACのオフライン戦(※1)では、野良連合に勝って、Mantis FPSに負けたところで、僕やチームのスキルには他のAPACチームと比べて大きな差があると気付いたんです。僕もチームも、もっと上手くなれると思って練習した。それで次の大会(※2)ではMantisを倒せたんです。

APACで最高の選手になれないと思ったことは一度もありません。自分もチームも現在のスキルに満足したことがない。だからこれまで成績を出し続けられているんです。

(※1: プロリーグ・イヤー2シーズン3でのAPACオフラインでのこと。当時Mag選手たちはMindfreakに所属していた)
(※2: シックス・インビテーショナル2018アジア予選でのこと)

日々の練習について

EAA: トップ選手には日々の練習や研究が欠かせないと思いますが、話せる範囲で構いませんので、自分のスキルを磨くために特に取り組んでいることは何ですか?

Mag: チームのIGLとしては、さまざまな試合時間や状況下でプレイできるようにする必要があります。僕がずっとやっているのは、プロリーグの試合、それも世界中の試合をできる限りたくさん見ることです。世界の試合を見て、別のメタ環境やリージョンではどんなプレイがされているのか、作戦やガジェットの使い方などの違いを分析するんです。

自分のためにもチームのためにも、試合中に多くの選択肢を持って、初めて目にする状況にも対応し、より良い決断ができるようにしています。世界を舞台にした試合ではそんなことばかりだからです。だからいつでもシージに関する知識を深めるようにしています。

プロの世界では同じ作戦は二度も通じない。チームには豊富なプランと対応力が求められる(シックス・インビテーショナル2020、Fnatic vs G2より)

EAA: 「世界の試合では初めて見る状況ばかり」というのは興味深いですね。逆に、以前やっていたことで、あまり効果がなかった練習法や習慣などはありますか?

Mag: 効果がなかったもの…。そうですね、チームの最初期にやっていたことなんですが、一度にかなりの数のスクリムをこなしていたんです。5マップでスクリムをしたりね。その頃は質よりも量が大切だと思っていた。

でもあれは大失敗でした。シージではプレイし続けて疲れが溜まると、個々のプレイヤーの判断はどんどん悪くなるし、ミスも増えるしエイムも悪くなる。何かを見逃すミスをしたり、判断が悪くなったせいでどうやってラウンドを取るのかも分からなくなってしまう。適切な判断ができないと、適切な攻めもできないんです。なので、ただスクリムをやりまくるというのは意味がないと分かりました。

スクリムでは量よりも質にこだわりましょう。一度にあまりに多くのスクリムせず、ポイントをしぼって、チームのいろいろな面を改善していくようにすると良いですよ。

EAA: 余暇にはどんなことをして過ごしていますか?

Mag: ジムに行くのが好きですね。健康を保てますし、ジムでならゲームのことも考えずに済むのでメンタルの質も維持できます。他に余暇でやっていることといえば、何カ月も前から日本語の勉強をしています。日本語は好きなので勉強するのは楽しいです。漢字を覚えるのにベストを尽くしているんですが、別々の漢字を覚えるのは難しいですね(笑)。それ以外ではテレビ番組や映画を見たりしてます。

シージの魅力

EAA: ではシージの話に戻りましょう。シージは「タクティカル・シューター」とも呼ばれており、世界のトップランクを目指すには高度に戦術的な考え方が必要になるんですが、それでも世界中で5500万人以上がプレイしています。シージの魅力はどんなところにあると思いますか?

Mag: 自分にとってシージの最大の魅力は、FPSであること以上に、ゲーム性の深さにあると思っています。毎日シージをプレイしていても、いつも新しい発見がある。新しい射線とか、上下を使った戦法。オペレーターやガジェットの新しい使い方。毎日何かを学べます。みんな挑戦することは好きだと思いますし、シージならゲームを通して挑戦を乗り越えることができる

オペレーター、ガジェット、そしてプレイヤーの作戦を組み合わせると、シージの研究には終わりがない

ただ単に他の人よりも上に立てるというだけじゃなくてね。そういう点がシージに多くの魅力を与えているんだと思います。

EAA: ちなみに新シーズンのテストサーバーはもうプレイしましたか?

Mag: 昨日(8月17日)始まったばかりなのでテストサーバーはまだプレイしてないですよ(笑)。でもインビテーショナルのときにテストプレイチームに入れてもらって、そこでのワークショップで新シーズンに来るもののテスト版は見せてもらっています。

新シーズン「オペレーション・シャドーレガシー」では新オペレーターZero(ゼロ)が登場する

新オペレーターのZero(ゼロ)は間違いなくクールですし、面白く使えそうなものを持っています。シージはアップデートの度に大きく変化して、常に進化を続けています。一度でも変更点に順応できれば、どう変化しても楽しくプレイし続けられますよ。

日豪の違い

EAA: Fnaticは日本のシージコミュニティでも名の知られたチームとなっていますが、日本とオーストラリアのシージコミュにはどんな違いがありますか?

Mag: 日本とオーストラリアではコミュニティが全然違っていますね。オーストラリアのeスポーツ産業はまだまだ発展途上ですし、視聴者数も少なければプレイヤー層も少ないし、シージにもほとんど投資されてないんです。才能ある選手の層も薄いし、発展性に乏しくて、他の地域、特に日本と比べると数年は遅れています。

2019年11月には日本の常滑市でプロリーグ・ファイナルが開催。チケットは完売し、会場には多くのファンが押し寄せた(写真:SiegeGG

一方で日本のプレイヤー層は巨大で、僕から見れば才能ある選手も豊富だと思うし、シージに関して言えば視聴者数が世界で最も多い国のうちの1つです。好きなチームを熱心に応援してる人も本当に多い。日本の友人たちを見ていると特にそう思います。

日本は以前からもっとeスポーツやシージに投資してくれても良かったのにと思います。日本のeスポーツやシージはとても大きなポテンシャルを秘めていると思うから、今でも十分に巨大なのに、これからもっとコミュニティが大きくなったら、いったいどうなるんだろうって思います。

PCについて

EAA: PCについての質問です。現在はどんなPCを使っていますか?パーツを買ったり交換するときに、シージのようなゲームで良いパフォーマンスを発揮するためにどんなポイントを重視していますか?

Mag: GPUとCPUが何より重要ですね。PCについて言えば、より良いGPUとCPUに最もお金をかけることをオススメします。僕が使ってるのは、CPUはRyzen 7 3700X プロセッサー。GPUはRadeon RX 5700 XT グラフィックスです。いちばん良いものが欲しいなら僕はAMD製をオススメします。シージの競技シーンでもAMDのが良いパフォーマンスを発揮させてくれるんです。

EAA: 良いPCを手に入れることはシージで勝つための唯一の道ではないと思いますが、良いPC環境をそろえていると、何か便利だったり、利点があったりするのでしょうか?

Mag: いや、より良いPCを持っていれば間違いなく、持っていない対戦相手よりも優位に立てますよ。良いPC環境ならフレームレートが高くなるので、(モニターの)リフレッシュレートも高ければ敵の姿をわずかに早く捉えることができます。シージではミリ秒単位の判断や、ミリ秒単位でのエイムが重要なので、より良いPCがいいんです

Mag選手も愛用するAMD製CPU、「Ryzen 7 3700X」

他にも爆発やブリーチングで壁を破壊されたときや、シールドが壊されたときは、爆発に巻き込まれたり、その場に留まらないようにしたいものなんですけど、シージの場合良いPCを持っていれば、どんな状況でもなめらかに描写してくれるのでチャンスも増えるんです。大したPCを使っていない相手と撃ち合いをするときも、そんな具合に優位に立てるんです。

EAA: スペック以外にも、PCのデザインや色などにこだわりはありますか?

Mag: うーん、デザインや色に好みとかはないですね。虹みたいに光るのは好きだけど、それ以外でデザインに好き嫌いはないです。

ステージ1の成績について

EAA: 競技シーンについてです。Mag選手やFnaticはAPAC Northディビジョンに出場し、ステージ1では12チーム中7位で8月のミニ・メジャーへの出場を逃しました。これについて、ピンの問題があったと言う人もいれば、日本や韓国、東南アジアの最新のプレイスタイルに適応できていないせいだと言う人もいました。実際のところ、今回の順位の裏にはどんなことがあったんでしょうか?

Mag: 最初に言っておくと、僕たちは日本や韓国、東南アジアのプレイスタイルには慣れきっていました。APAC Northが始まるまでにたくさんスクリムをしていましたから。APAC Northのチームが使う戦略はかなり複雑で、他と違う点は、彼らはとてもアグレッシブで、ランダム性が高く、チームメンバー個々のスキルに頼っていることです。

大抵この手のプレイスタイルを相手にするのは難しくて、こっちも個々のスキルで戦おうとしたんですが…、問題はピンの高さですね。ピンが高いとそれだけこっちが不利になるんです。1対1の状況では、ピンのせいでさらに不利になりました。ピンについてざっと説明すると…、もう知ってる人もいるだろうし、ステージ1のときも広く話していたことなんですが、要するにピンが高いと、自分たちは過去にいて、敵は未来にいるような感じになるんです。

座ってじっと待っていたときに敵がピークしてくると、キルされる以外にまったく何もできない。今言ったようにAPACの選手たちは個々のスキルでプレイしてくるからです。いつも高いピン値のせいでラグに見舞われて、おかげでメンタル的にも相当こたえました。高いピン値でプレイするなら、かなり受け身に立ち回って、後手番に回ることになるんです。クロスを組んで、敵がこっちを一人倒したら、いつでもキルトレードができるようにしておく。でも時間が足りなくて、僕たちは単に動きが予想しやすいチームになってしまった。逆に相手はこっちがやりたかったことをやってきた。

APAC Northディビジョン・ステージ1の順位表(Rainbow6APACより)

僕たちにとって本意じゃない、予想されやすい動きをしなければならなくなって、ステージ1の間はチームの士気やメンタルも落ちてしまったんです。どれもピンのせいですね。ただよく思い返してみると、負けた試合はどれも僅差でした。シージではたった1回の撃ち合いがそのラウンドの勝敗を分けることがあります。ピンが良ければ、もう1ラウンドか2ラウンド、3ラウンドくらいはこっちが取れたはずです。

ピンのために接戦から僅差で負けた試合のことはとても残念に思っています。ただもちろん、今は状況が状況なだけにフェアな対戦環境は望めないと分かっているので、移動するなどできる限りピン問題には対処していきたいです。それとは別に、APACチームは間違いなく前より強くなっていますから、もし僕たちが別の場所に移動できても、常に強くなり続けているAPACチームの力を考えると一戦一戦が難しい試合になるのは変わらないと思います。

ファンの皆さんへのメッセージとしては、APACチームはもう昔のようなチームじゃないし、ただピンが良いってだけじゃない。この状況下で入れ替え戦をやるのを避けるために僕たちはベストを尽くします。

EAA: Fnaticはステージ1の前に新選手としてStigsと契約し、戦略コーチとしてCrapelleも迎えましたね。彼らの加入によってチームやあなたの役割にはどんな影響を与えましたか?

戦略コーチとして新たに加入したCrapelle氏(写真:SiegeGG

Mag: 僕の役割自体は何も変わっていません。フレックスとしてプレイして、IGLもこなせています。チームとしての行動を決めるこの役職をとても楽しんでいます。でもCrapelleが加わったことで、敵がどんなに風に戦っていて、どんな守り方をしているかといったことに以前よりもさらに集中できるようになりました。敵のやり方を元にCrapelleが戦略を組んでくれるので、より望ましいプレイスタイルを整えて相手の弱点を探し、攻撃でも防衛でもその穴をついていけるんです。

Stigsについて言うと、彼はチームのスタイルによくフィットしていると思います。彼は個人としてのスキルも高く、適切なポイントで適切な指示もできる。入ったばかりの頃はプレイスタイルを変える必要もありましたが、今ではとてもチームになじんでいます。

仲間同士で高め合う

EAA: では最後に、いつかあなたのようなプロになりたいと思っているシージプレイヤーに一言アドバイスをお願いします。

Mag: まず必要なのは、楽しくシージができる仲間のいる環境に身を置くことです。ゲームへの情熱やモチベーションを共有できる仲間や、自分と同じくらい勝ちたい気持ちが強い仲間とプレイしましょう。他人から多くのものをどんどん取り入れていくチームは急激に強くなっていきます。仲間同士で高め合って、もっとずっと上手くなれるよう努力しましょう。

他には、勝利に至るためのチーム文化を築く必要もあります。「勝つか学ぶか」というメンタルを身につければ苦しいことは何もありません。いつでも、どうすればもっと上手くできたかを追求し、反省点を絞り込みましょう。ただ負けたことにショックを感じるだけとか、誰かに責任を求めるようなことは止めましょう。同時に、誰もが自分の行動に責任を持って、失敗は素直に認めて、もっと上手くなろうと努力すること。誰かを非難したり責任転嫁したりするんじゃなくてね。

シックスインビテーショナル2020でのMag選手 (写真:SiegeGG

あとは…、まぁ何はなくとも楽しまなくちゃね。プロ選手っていうのはクールな仕事で、成績が悪いとすぐ0点をつけられちゃうけど、それでも今の仕事をしていられるのが嬉しいんですよ。とにかく楽しんでください。がんばって!

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Mag選手はインタビューの中で、シージをプレイするときはより良いPC環境を整えることをオススメしていました。しかし良いPCと言われても、明日にでもすぐ買いに行ける方は少ないでしょう。

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