Respawn Entertainmentの『Apex Legends(エーペックスレジェンズ)』には公式競技シーン「ALGS」があり、ゲーム内でもプロチームをテーマにしたバンドルが2022年にリリースされました。
しかしその後、プロチーム関連アイテムが続かない背景には、パブリッシャーであるElectronic Arts(EA)とプロチームの間で、売上収益をめぐるトラブルが生じていた可能性が伝えられています。
プロチームのアイテムはもう出ない?
『エーペックスレジェンズ』はバトロワゲームでありながら、競技性の高さでも人気があります。2022年には、エーペックスeスポーツALGSをさらに盛り上げるべく、プロチームをテーマにしたバンドルも発売されました。
しかしDIGIDAYが報じたところによると、こうしたプロチームアイテムは今後もうリリースされない可能性があるようです。それどころか、さらに多くのプロチームが今後、エーペックスeスポーツから撤退して行くことが懸念されています。
打ち切られた「収益シェア」計画
複数のeスポーツ団体幹部からDIGIDAYに伝えられた話によると、20のeスポーツ団体とEAとの間で、「収益シェア」システムを確立する計画があったそうです。これはプロチームをモチーフにしたアイテムの売上収益の一部をチーム側に分配するというもので、ファンにとってはアイテムの購入が応援するチームの支援にもつながる嬉しい仕組みですが、交渉が難航した結果、結局この話は2022年9月に打ち切られたそうです。
計画されていたこの収益シェアシステムには、世界的にも名のあるeスポーツ団体、Team Liquid、G2 Esports、Cloud9、NAVI、Spacestation Gamingも関わっていたそうです。
しかし、今挙げた団体は、2022年後半から2023年初頭にかけて、いずれもロースターを解散してエーペックス競技シーンから撤退しています。2022年に相次いだ有名チームの撤退はALGSファンの間でも話題となり(Reddit)、このときも収益に原因があることが推測されていましたが、やはり今回の収益シェアの件とも関係がありそうです。
二転三転し、合意に至らず
この「収益シェアシステム」の具体的な中身は、両サイドの話し合いを通じて二転三転していったようです。
当初EAとRespawnからは、「収益シェア」ではなく、団体側に6万ドル(約804万円)のライセンス料を支払うという提案もあったそうです。しかし世界的なeスポーツ団体にとって、これは低すぎる金額です。
とある北米のeスポーツ団体は、スポンサー契約1件で100万ドル(約1億3400万円)以上が得られ、さらに他のゲームタイトルの収益シェアシステムでは、四半期でその2倍の12万ドルを稼ぐことができるのだとか。
eスポーツ団体側(100 Thieves、Alliance、Cloud9、Complexity、DarkZero、Faze Clan、Fnatic、G2 Esports、NAVI、NRG、Sentinels、Spacestation Gaming、Team Liquid、TSMなど、そうそうたる面々)は、このライセンス料の支払い提案を却下し、代わりに自分たちから上限なしの「売上収益の半分のシェア」と、最低額の保証を提案したそうです。
返答としてEAからは、一律ではなく、アイテム売上の良かった団体順に、より多くのお金を支払う仕組みが提案されたそうです。最も売り上げた3団体には16万ドル、次の3団体に12万ドル、次の6団体に8万ドル、残りの8団体に6万ドル、というものでした。
額面以前に、これもまた団体側が求める「収益シェア」の構造ではないため、却下されたそうです。団体側はそこで「売上収益の半分のシェア」に近い、上限なしのモデルを再び提案したそうですが、結局そのやりとりを最後に、収益シェアシステムを確立する計画そのものが消え去ることとなりました。
他社のeスポーツタイトルとは異なり、エーペックスではeスポーツ関連アイテムがわずかしか無い現状なのは、このように団体側との交渉が決裂したことが背景にありそうです。
結局問題はなに?
今回の話は、EAおよびRespawnと、eスポーツ団体側のどちらにどのようなメリット・デメリットがあるのかは、外野から判定できない難しい問題です。
eスポーツ団体からすれば、そのタイトルに関連した収益がなければ運営の負担になり、最終的には撤退するしかありません。とある団体によると、チームアイテムのデザインは2022年3月から始まり、同年10月中旬にリリースされる予定だったそうです。時間もコストもかかっているため、収益が見込めないと損失のみを計上することになります。
さらに、せっかく販売されたプロリーグバンドル自体も、とある団体幹部によると、その売上は「本当に少ない金額だった」そうです。中にはデザインそのものに関われなかった団体もあり、「誰も求めていないアイテム」になってしまったのだとか。EAを「(eスポーツ団体にとって)最悪の企業」とまで非難する団体幹部もいます。
しかし、これら一連の経緯説明はeスポーツ団体側からのものであり、EAおよびRespawnはコメントを発していません。
EA側から見れば、自社のIP(エーペックス)がさらに盛り上がる可能性があるとはいえ、eスポーツ団体を含む第三者企業に売上収益の一部を支払うという構造は、差し引きでは「お互い持ちつ持たれつ」の関係にはなっていないのかもしれません。実務の面でも、世界中の20ものeスポーツ団体と、個別にゲーム内アイテムのデザインや販売情報管理などのやりとりをするのにかかる負担は想像するに難くありません。
むしろマイナスの面の方が大きく、何より「コレクションイベント」などで登場するeスポーツ以外のコンテンツ販売のみで十分な売上を出せるのであれば、(エーペックスを長期的にどのようなコンテンツにしたいかはともかく)eスポーツアイテムを急いで出す必要性を、EA側は感じていないのかもしれません。
ちなみにお金の話に関しては、間もなく5月9日にEAの第4四半期および期末決算(2022年3月31日から2023年3月31日までの分)が発表されます。エーペックスについても、具体的な収益規模やeスポーツシーンに関する言及があるかに注目したいところです。
最終的にはプレイヤー次第か
他のeスポーツタイトルに目を向けると『VALORANT』や『CS:GO』、『レインボーシックス シージ』などが既に、eスポーツ団体との収益シェアのシステムを確立しています。今回報じられた内容からは、『エーペックスレジェンズ』ではこうしたシステムに今のところ後ろ向きであることがうかがえます。
いずれにせよ、良し悪しを決めるのはエーペックスを楽しんでいるプレイヤー側です。両者が議論する背景で、実は予想外に多くのプレイヤーがプロチームのアイテムを欲していたのなら、EAはせっかくのチャンスを逃した可能性があります。最終的にどのゲーム企業、どのタイトルの判断が正しかったのかは、時間とともに明らかになるのかもしれません。
日本のエーペックスプレイヤーの皆さんは、実際のところどのくらい「eスポーツアイテム」に関心をお持ちでしょうか。今回の件について思うところがあれば、ぜひコメント欄にお寄せください。
Source: DIGIDAY
TESTをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。
コメント
コメント一覧 (7件)
競技性って要は強いチームが勝って弱いチームが負けることだろ?
今季のAPEXのアジアリーグの結果を見てみればFnaticが連覇して7チームもが連続でプレーオフ進出しているらしいが、それでも競技性がないと言えるのか
バトロワに競技性なんてねーよ
誤字多すぎて理解不能
ゲームって人数や時間もお金も掛からない自己中で気楽なアソビだからね〜
人間関係も気楽希薄、大多数のライトユーザーが共有する相手が、そんな気楽希薄な相手なら、熱も上がり難いんじゃないかなぁ
適当に書いた、多分間違ってるかもしれんw
最後に例に上がった爆破系FPSなら競技シーンに興味あるプレイヤー率高いだろうが
バトロワはそうでもない気がするのよ
eスポーツシーンに興味ない側からすると、そもそもゲーム内でeスポーツチーム関連のアイテムを求めてない
そんなんにリソース割くぐらいなら、もっと一般受けするスキンとかを出して欲しい
とはいえそれがゲーム運営にもプラスに働くなら別に良いと思うが、揉めるぐらいならやめればとしか思わん
ゲーム外グッズとかだってあるんだし
一部の団体が文句垂れるせいで計画が飛んだような気がするな。契約の内容が気に入らないからってSNSとかで酷評しちゃうような人だと内部でどんな要求してるかわかったもんじゃないからEAも早めに手を切りたかったんでしょ。わかんないけどね。