インターネット通販およびストリーミングサービス企業としては説明不要の地位にあるAmazon(アマゾン)は、PvPとPvEが融合した新作ゲーム『Crucible(クルーシブル)』を日本時間5月21日午前4時からSteamでリリースしました。アマゾンはTwitchや自社製ゲームタイトル、さらに今後発表予定のクラウドゲーミング・プラットフォームともシナジーを発揮して、業界全体の新たな旗持ちとなれるでしょうか。
『クルーシブル』とは
PC向けにSteamで無料配信中の『クルーシブル』は、人間、エイリアン、ロボットによって構成された10人の「ハンター」から1人を選び、仲間と協力してAIの敵「クリーチャー」を倒し、「エッセンス」という経験値を集めてレベルを上げ、敵チームのプレイヤー達を倒すというPvPとPvEが組み合わさったMOBAシューターゲームです。
ゲーム業界も支配できるか
ビデオストリーミングサービスや、Twitchでのゲーム配信サービスを積極展開している世界的企業アマゾンは、2010年代から何千億ドルとも言われる資金を投じて独自のゲームタイトルを開発し、ゲーム業界全体における影響力を高めようとしてきました。同社の系列下にあるゲーム開発会社アマゾンゲームスタジオが手がけた新作チーム制オンラインシューター『クルーシブル』は、新型コロナウイルス感染症などの影響でリリースが延期されていましたが、5月21日からSteamで配信がスタートしています。
また、アマゾンは「Project Tempo」というコードネームのクラウドゲーミング・プラットフォームも開発中とのこと。Twitchで気軽に配信できるカジュアルゲームを通じて新たなプレイヤーを獲得しつつ、同種のクラウドゲーミング・プラットフォームを発表・運営しているGoogle、Microsoft、ソニーなどの企業との競争を繰り広げるものと思われます。
アマゾンのゲーミングサービス事業にたずさわり、現在はアマゾンゲームスタジオで戦略指揮を執っているのが同スタジオ副社長のマイク・フラジーニ氏です。
「大目的としては、Amazonの最高の部分を抜き出してゲームへ応用することです。しかしゲーム作りや、Amazonの企業慣習をそのゲームにも落とし込むのは時間がかかりました」
近年のゲーム業界の成長は著しく、2020年度の業界全体の収益は1,600億ドル以上であると予測されています。これは世界の音楽業界(約190億ドル)や映画業界(約430億ドル)を合わせても2倍以上の規模です。また自宅待機が強いられている人々向けの娯楽需要も高まっており、今年度の第1四半期ではゲームコンテンツ全体の売上高が大幅に伸びるという予測も立てられています。アマゾンがこの「リッチな」業界でもビジネスをしようとするのは自然な流れと言えます。
今年は『クルーシブル』以外のゲームも準備中
2020年にアマゾンゲームスタジオからリリースされるのは『クルーシブル』だけではありません。『New World』というMMORPGは、ファンタジーの雰囲気となった並行世界の17世紀を舞台にプレイヤーたちが世界中を冒険するというもので、今夏のリリースを予定しています。
『クルーシブル』はアマゾンゲームスタジオのシアトル第1スタジオとして位置づけられるRelentless Studiosの開発ですが、『New World』は2014年にDouble Helix Gamesを買収して設立された、カリフォルニア州アーバインの第2スタジオで開発が進められています。このアーバイン・スタジオではさらに『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズを原作とするマルチプレイヤーゲームを開発中です。
また、ソニーオンラインエンタテインメント(現デイブレイクゲーム)で社長を務めたジョン・スメドレー氏が、アマゾンに入社して設立したサンデイエゴの第3スタジオでも何かのプロジェクトが進行しているとの噂がありますが、詳細はまだ明らかになっていません。
一連の戦略を提案してきた人物の1人が、ゲーム事業を統括するフラジーニ氏。2009年に書籍部門からゲーム小売部門へ移ってから、いち早く自社製クラウドコンピューティング・サービスを築き上げることを推進。またアマゾン独自でゲームタイトルを開発することを訴えてきました。もっとも、アマゾン経営陣の同意を得るのは難しくなかったそうです。
「お客様を含めて、皆さん誰しもゲームをするのが大好きだということは明らかでした。そんなお客様に私たちの方から何かをする必要があることも、同じくらい明らかでした」
『クルーシブル』は二転三転
『クルーシブル』は『リーグオブレジェンド』や『Dota2』などの要素を持ち込んだ、深い戦略性のあるチーム制シューターゲームです。しかし「アマゾンでゲームを作る」というアイデアを通すのは簡単でも、実際の開発作業は困難を極めたようです。Relentlessを経営するアマゾンゲーム部門のルイス・キャッスル氏は、2014年に開発をスタートしてから、オンラインでの競技シーンやTwitchなどのゲーム配信コンテンツの人気の高まりに合わせて、何回も『クルーシブル』をデザインし直したと語っています。
「何百もの人々が非常に長い間精力的に働き続けてくれたおかげで、素場らしい作品ができました。ありがたいのは、私たちが一緒に仕事をしているのが、良いものを作るためにチームをフル回転させ続けておけるくらいには潤沢な資金を持っている企業だったことですね」
本来であれば3月31日のリリースを予定していた『クルーシブル』は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてマーケットプランを変更。4月12日に延期となりました。しかし3月23日に行われたビデオ会議で二度目の延期が決定。リリースは5月まで持ち越しとなりました。
強敵ぞろいのゲーム市場で生き残る道は?
5月から『クルーシブル』や『New World』など、これまで以上に大予算を投じた自社製ゲームを展開していくアマゾンですが、同様にゲーム配信サイトTwitchでも、拡張機能を使った関連コンテンツを提供する予定です。他人のゲームプレイを見ているだけではなく、コメント欄で特定のコマンドを使うことで配信者のゲーム内容に干渉できる機能は既に存在していますが、『クルーシブル』などのタイトルでもこれらに対応していく予定です。
アマゾンはさらに「Project Tempo」というコードネームがついたクラウドゲーミング・プラットフォームも開発中です。他社プラットフォーム同様、どこにいても、どんな端末からでも、大容量化の傾向にある最新ゲームをダウンロードすることなく遊べるようになります。
とはいえ同種のサービスの拡大を狙っているライバルは、Googleの「Stadia」やMicrosoftの「Project xCloud」、ソニーの「PlayStation Now」、あるいはNvidiaの「GeForce Now」など、いずれもビッグネームばかり。
「Project Tempo」は早ければ年度内にもアーリーアクセスバージョンをユーザーに向けて紹介したいそうですが、新型コロナウイルス感染症の経済全体への影響を鑑みると、2021年度にずれ込む可能性もありうるでしょう。10年ほどかけてゲーム開発の土台を整備してきたアマゾンですが、果たして「アマゾンゲームスタジオ」は未来のトップブランドになれるのでしょうか。そしてクラウドゲーミング・プラットフォームをめぐる各社の勢力争いは、何が勝敗を分けることになるのでしょうか。今後の展開が気になるところです。
『クルーシブル』は日本時間の5月21日木曜日午前4時からSteamで配信が開始されています。 基本プレイ無料のこのアマゾン製シュータータイトルを、以下のリンクからダウンロードして一度はプレイしてみてはいかがでしょうか?
Source: NEW YORK TIMES
TESTをもっと見る
購読すると最新の投稿がメールで送信されます。
コメント
コメント一覧 (13件)
ストリーミングサービスが受け入れられない人って、ゲーミングPCにガチガチ課金して引けなくなってるバカだけでしょ?
最新のゲームが月額でできるようになったら普通にみんな入ると思うな
なんかこう、発想はそう悪くないし可能性も無くもなさそうなんだけど
じゃあそれに期待して今やり込むほど面白いかっていうと非常に微妙
多分人口確保できねえだろうなコレじゃ
同種の拡大狙ってるライバルがps4持ってる人向けのpsnow以外軒並み死産で笑う
ネットサービスどれか1本に絞らせて欲しい。
中途半端に全部使ってる。
できれば必須のAmazonが全てを網羅してくれ。
Lolのジャングルみたいなこと?
PvE要素がひどすぎる
ただの移動する生き物を虐殺したり植物壊すだけ
PvPはスピード感なさすぎる
日本語ないんかい!まぁいいか
これが売れるか分からんとこだけども消費者的にはその内面白いゲーム出してほしいもんだ
例えばアマプラ入ってればストレージとかデイリー増加とかで有利になるとか面白い試み出来そう
ていうか、本体ダウンロード出来なくないですか?
追加コンテンツ?みたいなのは買えるんですけど。
だから、たぶんゲームそのものの評価じゃなくてダウンロード出来ないことに対しての怒りの低評価じゃないですか?
おま国で日本はDL出来ないけど日本語のレビューなかったから低評価は海外勢のやつばっかなんよ
Steamの評価ほぼ不評だけど…