Ubisoft(ユービーアイソフト)の『Rainbow Six Siege(レインボーシックス シージ)』日本国内eスポーツ競技シーンでは、8月12日に新宿住友ホールにて「X-MOMENT Rainbow Six Japan Invitational 2023(RJI 2023)」のオフライン・ファイナルを開催。
日本のプロ3チームと、英国からの招待チームMNM Gamingがトーナメントで争い、MNM Gamingが今年のRJIのチャンピオンに輝きました。
「RJI 2023」オフライン・ファイナル
お盆休みの中で開催された日本でのオフライン大会「RJI 2023」。久しぶりのオフラインということもあってか、新宿住友ホールには多くのシージファン&プロチームのサポーターが押し寄せました。
会場には物販コーナーのほか、プロ選手たちとの交流コーナーも設営。会場内のファンの行列に、英国からの招待チームMNM Gamingの選手たちも驚いている様子でした。
優勝はMNM Gaming!
今年の「RJI」は全1日・3試合で構成。第1試合と第2試合はそれぞれBO1でしたが、どちらも短時間ながら密度の高い試合展開が見られました。
- 第1試合:CYCLOPS athlete gaming OSAKA(CAG) vs IGZIST(7-5)
- 第2試合:KAWASAKI SCARZ vs MNM Gaming(4-7)
- グランドファイナル:CAG vs MNM(0-2、BO3)
グランドファイナルのマッチアップはCAG vs MNM。BO3を行い、MNMがマップスコア0-2で勝利しました。MNMのメンバーたちは日本のファンから歓声を浴びながらRJIチャンピオンに戴冠し、賞金200万円を獲得することに成功しました(試合詳細は後述)。
CAG vs IGZIST
「RJI 2023」の第1試合は、日本チーム対決CAG vs IGZIST。「銀行」がその舞台となりました。
CAGは3月に加入したChibisu選手が活躍を見せつつ、序盤を3-0とリード。そのまま攻撃での優位性を活かして5-1で攻防交代すると、6-2で先にマッチポイントを獲得しました。
しかし、IGZISTも攻撃から逆襲を開始。Solty選手によるGrim(グリム)を使った素早いエントリーや、Maavi選手による意外性のあるディフューザー設置などでCAGを翻弄し、6-5まで寄せることに成功します。
しかし最後は、IGZISTのハッチダイブに対応してCAGのAnitun選手が粉砕。7-5でCAGの勝利となりました。
CAG試合後ミニ・インタビュー
試合後のインタビューでは、CAGの皆さんにお話をうかがいました。
Q. 今回のIGZISTとの試合は準備通りに運べたか
Chibisu「ちゃんとドローンで情報を取って、どんな守りをしているかを確認しました。(チーム内の)会話もスムーズに進んでいて、ちゃんと状況の把握ができていました」
Q. 攻防が交代してからはIGZISTのペースだったが
BlackRay「ラウンドにも余裕があったので、思い切って色々試してみたんです」
Papilia「これは私の考えですが、『銀行』は攻撃有利なところがあるマップなんです。とはいえ攻撃を通すのが難しいことを課題にするチームが多い中で、今回は攻撃で多くラウンドを取れたので、タイムアウトで選手たちに(色々試しても良いことを)伝えました」
Q. タイムアウトではどのような話をしたか
Papilia「IGZISTの攻め方の特徴を伝えたうえで、自分たちはどう守るか。これは選手たち自身でも話せていましたが、それに補足する形で『こうしたらどうか』と伝えていました。ただ選手たち自身の答えも合っていたと思います」
Q.間もなく「イヤー8シーズン3」が始まるが、現在の対戦環境について
Anitun & BlackRay「Fenrir(フェンリル)がうざい(笑)」
Anitun「うざいオペレーターが多いですね。どれかをBANしたうえで、あとは妥協してやるしかない」
SCARZ vs MNM
第2試合はSCARZ vs MNMのBO1。舞台は「高層ビル」。ここはMNMが最近、ヨーロッパで継続中の大会「R6 Central Combine」において、対戦相手を7-0で破壊する強さを見せていたマップです。
コペンハーゲンメジャーのベスト8チーム同士となったこのマッチアップは、MNMが4-7で勝利を収めました。防衛ではSolotov選手がエントリー勝負で強さを見せてSCARZの組み立てを阻害すると、前半で稼いだリードを活かし、そのまま勝ち切ることに成功しました。
SCARZ試合後ミニ・インタビュー
SCARZのリーダーPyon選手や、コーチのBlueno4ronandes氏に、試合を振り返っていただきました。
Q. 試合を振り返って、うまくいった点、いかなかった点について
Blueno4ronandes「MNMがどういうスタイルなのかは分かっていたので、そこにフォーカスして、今の実力でどこまで勝ちきれるかという用意をしていました。うまくいった点としては、MNMのスタイルをSCARZの選手たちが掴んだうえで、そこから自分たちがどうしていくか、という対応はできたかなと思います」
Blueno4ronandes「逆に、最後の方のラウンドでMNMが(スタイルを)変えてきたので、こちらもタイムアウトを切って変えていく…、というのをやってみたのですが、そこは相手の方が一枚上手だったと思います。そこがうまくいかなかったかなと」
Q. ステージ2でマッププールが変わるが、新マップ(領事館とラボ)の研究は進んでいるか。それとも最初はBANしていくか
Pyon「(新マップは)研究中ですね。ただ、マップBANで固定BANを作ると、BANの先攻後攻によっては戦うマップを相手に決められてしまうんです。自分たちは固定BANを作ると対策されやすいので、そういう点では固定BANをなるべく作らず、オールラウンダーに近いような形でいきたいです」
Pyon「ただ、新しいマップが来てもコミュニケーション面を伸ばして対応していけば、問題ないと思っています。ですので、自分たちではなるべくBANしないようにします」
Q. 現在の対戦環境を踏まえ、間もなく始まる「イヤー8シーズン3」ではどんな変化が見たいか
Pyon「防衛側に罠ガジェットが多いのですが、それを壊せるオペレーターが限られているんです。(攻撃側のサブガジェットに)GONNE-6がありますが、それにも限界があります。Fenrirのように、上に置かれるとフラググレネードがないときついので、フラグ持ちをもう少し増やして欲しいですね」
Pyon「あとはソフトブリーチ系。たとえばAsh(アッシュ)のブリーチング弾の数を3発に戻したり…。今は需要があるオペレーターと、ないオペレーターで二分化してしまっています。無理にフラグを増やす必要はないと思いますが、使われていないオペレーターたちに、フラッシュバンのような有効なガジェットを持たせて欲しいですね」
Pyon「防衛側には特に変えて欲しい部分はないのですが、強いガジェットがとことん強いです。異なる防衛の仕方ができるのは面白い点ではありますが、強い防衛オペレーターが全員BANされていない試合だと、攻めの構築が難しくなります。撃ち合いに寄りすぎている理由はそこにもあると思います。防衛側の強いオペレーターを弱体化して、攻撃側の有効なガジェットを増やす、という調整をして欲しいですね」
グランドファイナル
午後からは、いよいよ迎えた「RJI 2023」の記念すべきグランドファイナル。CAGとMNMの、BO3での激突となりました。
第1マップはMNMピックの「クラブハウス」。Azami(アザミ)とFenrir(フェンリル)がBANとなり、防衛スタートのCAGはラウンド序盤から仕掛けていく形に。一方でMNMは、これをオープニングキルの機会として活用します。人数差をつけながら得意な形で攻め込むMNMは、1-5でリードして攻防交代。そのまま2-6と、早々にマッチポイントを獲得します。
ここでCAGがタイムアウト。Papiliaコーチに鼓舞された選手たちは、攻撃サイドから逆襲を開始します。第10ラウンドではAnitun選手のエースも見られ、会場からはCAGコールが。2-6から6-6まで寄せてオーバータイムに突入すると、一気に7-6で逆転マッチポイントを獲得することに成功しました。
しかし、最終的にはMNMが強みを発揮。最終15ラウンドでは早めの攻めを見せたCAGでしたが、MNMがこれをしっかりおさえて7-8。MNMが第1マップを制しました。
第2マップはCAGピックの「カフェ」。0-2と再びMNMがリードしたところで、CAGのPapiliaコーチが早めのタイムアウトを取ります。修正しつつCAGは、第6ラウンドではSuzuC選手が耐えるなどして3-3とイーブンに。そのまま5-5とシーソーゲーム模様になりましたが、今度はそこでMNMがタイムアウトを取りました。
第11ラウンドではMNMのTyrant選手によるリテイクが刺さり、MNMのマッチポイント。第12ラウンドではBlackRay選手がBlitz(ブリッツ)を、Anitun選手がGlaz(グラズ)を投入するCAGスタイルを爆発させましたが、屋上からの急襲にも見事に対応したMNMが5-7で勝利。堂々たるパフォーマンスで「RJI 2023」チャンピオンに輝きました。
CAG試合後ミニ・インタビュー
Q. 2マップ目「カフェ」での早いタイミングでのタイムアウトについて
Papilia「自分は今がどんな状況かをある程度追えていたのですが、選手視点ではプレイフィールで考えることが多いので、コールが上がった時点で取るべきだなと考えました。自分なりの考えを伝えて、選手たちがそれを明確にして対応してくれました」
Q. コーチとして、タイムアウトを切るタイミングの意識・考え方
Papilia「タイムアウトは『取らされる』という感覚がありますね。状況的に取らざるを得ない、ということもあるのですが…。タイムアウトでは長く話し合いができ、相手に対して後出しができます。先にタイムアウトを取ってしまうと、相手が後出しできることになってしまいます。(先にタイムアウトを取っていた場合)それを返せるかは選手たちにかかってしまいます。ですので、先にタイムアウトを取りたくないという気持ちはありますね。もしそれでラウンド差が離れてしまうと、どうすることもできなくなってしまうので」
MNM試合後ミニ・インタビュー
Q. 事前にCAGのことはどのくらい研究した?
Eden(アナリスト)「私たちは基本的に、対戦する可能性のあるすべてのチームを研究して臨んでいます。今回の研究の仕方も、ヨーロッパリーグのチームを相手にするときと同じでした」
Q. タイトな試合展開だったが、MNMの視点で、最終的に勝敗を分けた要因は?
neLo「チームとしても既に長いので、連携だったり、コミュニケーションの部分で早い対応ができたことだと思います。実際に、私たちが試合中に会話をする量はめちゃくちゃ多いんです。コミュニケーションがスムーズであることに、撃ち合いで勝てたことが加わって、優勝できたのだと思います」
Q. Julioコーチの加入以降、さらに成績を伸ばしてスキルも向上しているが、コーチとしてどんな仕事を?
Julio「チームの選手たちには、それぞれ好きなプレイスタイルがあります。それらをベースに伸ばしていくという方針でやっています。それが今のMNMになっているんです。MNMは元々パッシブなスタイルが好きで、最初にいくつかキルを拾ってから行動を開始します。あとはタイミングやテンポに応じて動いていくのも好きですね」
Julio「私は基本的に、選手たちが元々好きだったプレイスタイルに合わせる形で、(選手時代の世界チャンピオン経験者としての)経験を活かしたオフラインでの心構えや、細かい修正を伝えているんです」
「RJL 2023」シーズン2が9月2日開幕
「RJI 2023」は無事に完結しましたが、今年の戦いはこれからがヤマ場。間もなく、世界全体のシージ競技シーンが再開し、「BLAST R6 Major Atlanta」、通称アトランタメジャーを目指した「ステージ2」が始まります。
日本のプロリーグ「RJL」でも、このステージ2に相当する「シーズン2」が9月2日スタート。日本の各チームが再び、メジャーの出場権をめぐって激突します。
「年間3部構成+インビテーショナル」だったスケジュールが刷新され、「年間2部構成+インビ」となった『レインボーシックス シージ』競技シーン。他の地域と同じく日本でも、世界ランキングに関わる試合が無い、のんびりした夏の日が続いていました。
そんな中で来日した燃えるマシュマロ軍団MNMは、今回の「RJI 2023」を通して、RJLチームはもちろん、日本のシージコミュニティ全体の闘志に改めて火をつけてくれたと言えるでしょう。
2022年のRJIではTeam BDSが優勝し、続くヨンショーピングメジャーでもチャンピオンとなりましたが、果たしてMNMはこれを「RJI招待チームのジンクス」として継続できるでしょうか。あるいは、日本チームの方から「待った」をかける展開になるのかもしれません。9月からも引き続き、シージeスポーツ競技シーンに注目していきましょう。
MNM Gamingの皆さん、RJI優勝おめでとうございます!
Source: X-MOMENT
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コメント
コメント一覧 (2件)
ファイナルなのにBO1混ざってんのがな…せめてBO3にして欲しいよ
わざわざ海外チーム招待してんのに、準決で1マップって何の練習にもならんだろうに
高い金払って日本に旅行しに来てもらって、ついでにちょっとだけ練習してもらって、賞金だけプレゼントとか、日本側の旨味が少なすぎる
熱い試合だったなー