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『Horizon Zero Dawn』徹底レビュー: 圧倒的なクオリティーで魅せる、退廃した文明の探求を軸に回る物語

『Horizon Zero Dawn』のストーリーに迫るシネマティックトレーラー公開
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今回は少し趣向を変えて一本のゲームの纏まったレビューをお届けします。ご紹介するのは『Horizon Zero Dawn』(以下HZD)。『KillZone』シリーズで有名なゲリラゲームズによる作品です。

2017年3月2日に発売されたHZDですが、完全新規IPながら高い完成度により世界中から非常に高い評価を受けています。そして先日、遂にDLC「The Frozen Wilds」の海外における配信日が2017年11月7日予定であることが発表されました

開発チームは今後も意欲的にタイトルの拡張に取り組んでいくとしており、更なる躍進が期待される新規タイトルとなったHZD。その圧倒的なクオリティに魅了されたファンの一人として、より多くの方にこの作品の魅力を伝えていきたいと思い、遅ればせながらレビューを書きました。主に世界観・アクション・クエスト構成に触れていきます。

CONTENTS

退廃した文明

Horizon Zero Dawnレビュー画像1

HZDは文明が滅びてからざっと1,000年ほど経過した世界が舞台です。現代文明における建造物の骨格たる鉄筋コンクリートは爆裂現象によりことごとく破壊され、超大型の建物だけがわずかにその残骸を残すのみ。車両だったと思われる物体も塗装が剥げた場所から水が侵入したのでしょう。もれなく同じ運命を辿っています。

『Horizon Zero Dawn』「アーロイの旅立ち」篇トレーラー(日本語吹替版)

そうやって作り上げられた文明の名残に生い茂り、これでもとばかりに我が世を謳歌する植物たちの山。植生もバリュエーションに富んでおり、現実世界の気候区分に忠実に作られています。熱帯では鬱蒼とした背の高い草木が生い茂っていますし、寒帯に近付けば針葉樹林が林立しています。

『Horizon Zero Dawn(ホライゾン ゼロ ドーン)』

今を生きる我々人類がいつか何らかの原因で死に絶えた場合、現実の文明も水分と植物によりゆっくりと磨り減らされていくことでしょう。非常にリアルで想像を掻き立てられる文明の滅亡が描かれています。

Horizon Zero Dawnレビュー画像2

ただ、この作品は「リアルに描かれた滅亡」だけでは終わりません。その新たな世界を闊歩して牛耳っているのは、現実世界をはるかに凌ぐ技術で作られた機械たち「機械獣」なのです。

『Horizon Zero Dawn(ホライゾン ゼロ ドーン)』

『Horizon Zero Dawn(ホライゾン ゼロ ドーン)』
“原始”的な世界に蔓延る”技術”の結晶。この一見矛盾しているようで一方では調和しているように見せる世界設定により、HZDはまるで和音のように絶妙に”ずれた”世界を作り上げました。本来同時に存在しえないはずの二つの存在が共存する空間。どこかスチームパンクのようでもあります。そこには単なる原始的な文明ではなく、一度滅んだが故の新たな文明が息づいているのです。

生きるための狩り

プレイヤーはそんな奇妙な冒険の世界に”狩り”を通じて干渉していく事になります。先駆けたる先達のおかげで、今やひとつのジャンルとして確立された分野ですね。その先達による”狩りゲー”と呼ばれるゲームは、伝統的に”ハメ”や”ゴリ押し”を良しとしてきませんでした。

「段差や狭い空間を利用して敵から攻撃される事なく一方的に倒したり、回復薬や強化系の薬に物を言わせて倒したりすることができる」これは通常狩りゲーにおいて修正される対象になりうるものです。アクションの楽しみを損ない、ひいては討伐の達成感が失われてしまうという開発者の配慮でしょう。よって、「製作者の意図した領域が明確に存在するフィールドで敵を倒していく」これが従来の狩りゲーと呼ばれるジャンルの”狩り”でした。

一方HZDは、これまでとは全く違う角度から”狩り”を捉えています。伝統的な狩りゲーと同じように正面きって敵と相対し正々堂々殴り合う事も出来ますが、他方で今まで禁じ手とされてきたようなやり方を許容する余地も併せ持っています。

遠距離からの一方的なステルス攻撃や属性攻撃による弱体化は基本戦術ですし、大量に設置可能な罠で作ったトラップ畑に誘い込み、アクションと呼べるほどのアクションを経ずに倒す事も可能です。敵を錯乱させる特殊な矢を使ってひたすら同士討ちをさせるのも悪くない手です。

大量の敵、あるいは強敵を相手取った時に「正々堂々闘ってもよいが、闘わなくてもよい」これがHZDの”狩り”がプレイヤーに提供してくれる自由です。

例えば下の画像に写っている敵「サンダージョー」は狩りの多様性を体現する存在と言えるでしょう。足元に見える小型の機械がちょうどプレイヤーと同じくらいの体高。有無を言わさぬ巨体です。

Horizon Zero Dawnレビュー用画像4

加えて火力の高い遠距離攻撃可能な武器を複数装備し、更にはその巨躯に似合わぬ俊敏さまで持ち合わせ、駄目押しのように全身は非常に硬い装甲に覆われているという、まさに機械獣の中の機械獣。離れれば高威力のレーザーやエネルギー弾が飛んできて、近付けばこれまた致命的なダメージを与える体当たりや噛み付きが待ち構えています。

正面から闇雲に矢を射っていても微々たるダメージしか入らず、こちらは回避をいちど失敗しただけで体力がごっそり削られる。総じて人後に落ちない難敵として地上を闊歩するサンダージョーですが、HZDにおいて彼を倒す手段は実に豊富に用意されています。

遠距離からステルス狙撃を行い攻撃手段を奪うか?炎上させじわじわ削っていくか?近くを徘徊している別の機械を呼び寄せて襲わせるか?懐に飛び込み空気砲をばらまいて装甲を剥がして丸裸にするか?全てはプレイヤーの手に委ねられているのです。「”狩り”は生きるために行うものであり、そこには手段の善悪は存在しない」高い自由度からそんな価値観が垣間見えます。

失われた文明の探求を軸に回る物語

ここまで世界観、戦闘に関して触れてきました。となると残りはやはりクエストの構成ですね。

狩りの疲れを狩りで癒す脳筋生活が本当に楽しいためついつい忘れてしまうのですが、HZDの世界は本当に謎だらけです。そもそも何故人は文明を失ったのか。遺跡他、色々な場所で見つかる様々な情報の断片から推測するに、かなり発達した文明を持っていたことは間違いありません。現実世界で目下問題となっている環境問題すら解決していた程の技術の進歩を遂げておきながら何故滅びたのか。

Horizon Zero Dawnレビュー用画像6

また、なぜ機械獣たちは世界のあらゆる場所で暴れ回るほどに元気が有り余っているのかも大きな謎です。人の手が入らなくなって1000年あまりも経っているのに、機械獣たちは何のために、どうやって動いているのか。

Horizon Zero Dawnレビュー用画像5

HZDではこれら文明の謎に、更に主人公アーロイ自身の謎を交えてメインクエストが進行していきます。なぜアーロイは部族の中で異端児として扱われていたのか?アーロイがその謎を解明していくのを通じて、プレイヤーは世界の根幹に触れていくことになります。

主人公アーロイ属するノラ族は非常に内向的な部族なので、外部との交流がかなり少ないです。その中で異端児扱いされて、会話をすることすら禁じられていたアーロイは世界についてほぼ何も知らない状態です。つまり、ゲーム開始時のプレイヤーの状態と一致しているんですね。

"世界について何も知らない主人公"はベタですが良いスタート地点です。プレイヤーが知らない事はアーロイも知らないのです。アーロイの世界の探求はそのままプレイヤーの探求になるので、丁寧に情報を追っていけばストーリーラインから取り残される事は無いでしょう。

サブクエストにも抜かりなし

メイン以外のサブクエストもきっちり用意してあります。内容自体は追跡か狩猟、大抵はその両方なのですが、しっかりとしたバックグラウンドストーリーが下支えしているため先が気になる仕上がりになっています。

アーロイが活用する過去の遺産「フォーカス」を使うことにより、ストレスレスにクエストを追っていける仕様も好感触。手がかりや敵を探してあちこち彷徨う必要がありません。

HorizonZeroDawnレビュー用
HorizonZeroDawn用レビュー

単に敵を倒すだけのクエストひとつ取っても、いったいどこの誰がそれを必要としているのかが語られますし、時には思わぬ結末に行き着くことも。ゲームクリアに不可欠な要素ではありませんが、プレイする際はぜひともサブクエストも並行しながら攻略していくことをおすすめします。

また、サブクエストの一環である収集物の入手も心躍るものとなっています。収集物は実に様々な物が存在していて、単純に特別なアイテムと交換できるものや、かつての世界の住人が残した音声記録や、当時の世界情勢を垣間見ることが出来るテキストデータなど選り取り見取りです。

個人的にイチオシなのが、文明崩壊前の情報が雑多にまとめられた”データポイント”と呼ばれる収集要素です。当時のニュース記事の抜粋から企業内部でやり取りされていたメールまで、こちらも実に多種多様なラインナップ。文明が滅びる前の世界がわれわれの知る世界と比べてどのように変遷していたのかがうかがえます。

HorizonZeroDawn用レビュー
HorizonZeroDawn用レビュー

上の二枚の画像はテキスト形式のデータポイントですが、もうこのやり取りだけで心が躍ります。『パンクロックが堅苦しい学者のものとなった世の中で気候調整AIが脱走する』。なんという素敵な響き。未来は自分たちの生きる今とは関係のない遠い何かではなく、今この場所から連綿と続いた結果、形成されたものだということを再確認させてくれます。

なお、ホログラム形式のものや音声形式のものまで合わせると、データポイントだけでも軽く100を超える数が用意されているとのこと。私も折りを見て探索していますが、すべて見つけるにはまだ至っていません。

総括: 不満点もあるが非常に完成度の高い新規IP

ここまで一通りまとめてみましたがいかがでしたでしょうか。主に優れている点を紹介してきましたが、もちろん全く不満が無いわけではありません。

例えば装備周りのインターフェースは多様な装備に対応出来ておらず、いちいちメニューを開いて装備を入れ替えるのは手間に感じます。また、アイテムを預ける倉庫が無い上に敵を倒すたびに大量の素材を落とすので、手持ちのアイテムボックスは常に圧迫されていて悩まされます。このあたりはアップデートか次回作でぜひ改善して欲しいところですね。

HorizonZeroDawn用レビュー画像

しかし、それらの欠点が存在していてもなお、HZDが傑作と呼ばれるに相応しい完成度であることは揺るがないでしょう。技術的な面に目をやってもフレームレートを含めた動作回りは非常に安定していますし、オープンワールドゲームで悩みの種になることが多いロード時間もそれなりに短くて快適。おおよそ隙の無い出来です。完成された構想とそれを実現する技術力。ゲーム開発はここまで来たのだなと感じます。

今や押しも押されもしないメジャータイトルになっているシリーズも、1作目はどこかしらに粗が目立ってたりするのがこれまでの"普通"で、そこから2作目3作目を経てどんどんブラッシュアップされていくのが当然の流れでした。

対してHZDはまるでシリーズ集大成の様な完成度であり、それでいて新規IPの斬新さもしっかり持ち合わせている。実は私の知らないところで1と2が発売されていたと言われれば思わず信じてしまいそうな完成度です。逆にこれからはこのレベルまで質を高めてこないとAAAタイトルと勝負できない時代なのかもしれませんね。

ますます加速するゲームの未来に思いを馳せた所でレビューを締めさせて頂きます。ここまで読んでくださってありがとうございました。興味が湧いた方は、この機会にHZDの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

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コメント

コメント一覧 (18件)

  • はっきり言ってこのゲームが面白くないと思う人は世間一般から見て変わり者。自分は変わり者じゃないと思うなら買うべき。

  • 正直ウィッチャー3プレイ済みだと物足りない感はある

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