マイクロソフトのアクティビジョン・ブリザード買収をめぐり、現在アメリカではマイクロソフトと連邦取引委員会(FTC)の公聴会が行われているところです。
公聴会ではマイクロソフトとアクティビジョン・ブリザードだけでなく、ソニー、任天堂、NVIDIAなど、本件に関係した企業の内部事情や思惑が次々に明かされているところで、ゲーム業界的にも興味深い内容となっています。
アクティビジョンCEOコティック氏の証言
現地時間6月29日で4日目を迎えたFTCの公聴会には、アクティビジョン・ブリザードCEOのボビー・コティック氏が登壇。同社の看板タイトルである『コール オブ デューティ』シリーズに関しても、CEO本人から興味深い話を聞くことができました。以下にその内容を抜粋してお届けします。
『コール オブ デューティ』シリーズ全般について
- MSとの合併について:
- コティック氏としては、マイクロソフトとの合併を完了させたい。株主の98%も賛同しているため、CEOとしてそれに応じる責任がある、としている
- CoD アクティブユーザー/月:
- 『コール オブ デューティ』シリーズの月間アクティブユーザーは1億人
- CoD アクティブユーザー/日:
- 一日あたりのアクティブユーザーは7,000万人
- CoDのプレイヤー比率:
- 最もプレイヤー人口が多いのはモバイル(※『CoD:モバイル』のことと思われる)
- 次点がPCとPlaystation、Xboxのプレイヤー比率は最小
- CoDのセールス:
- 『CoD:MWll』はシリーズのセールス記録を更新
- CoD過去作について:
- 前年の『CoD:Vanguard』については「失望させられる商業成績だったが、良いゲームだったと思う」
- CoD先行配信:
- 『コール オブ デューティ』新作が、特定のプラットフォームだけで最初にプレイできるようになる契約は「あり得る」(※独占ではない)
CoDシリーズのモバイル展開
- モバイルチーム:
- アクティビジョン・ブリザードのモバイルチームは2022年に大きく拡大され、キングスタジオの持つノウハウを開発に活かしている
- Tencent:
- テンセントが『CoD:モバイル』を開発したのは、アクティビジョンに開発能力がなかったため
- ウォーゾーン発売時期:
- 『ウォーゾーン モバイル』はもっと早くリリース予定だったが、結局秋頃に延期された
任天堂との10年契約、その後…
- 任天堂との10年契約について:
- マイクロソフトはコティック氏を含め、アクティビジョンの誰にも事前に相談をしていなかった
- アクティビジョンのチームは今のところ誰も、任天堂側との10年契約に関連したやりとりをしていない
- 任天堂版CoD:
- 任天堂ハード版の『コール オブ デューティ』の開発も始まっていない
- もしマイクロソフトとの合併が完了しなくても、アクティビジョンは一企業として任天堂ゲーム機に『コール オブ デューティ』を出すことは検討している
任天堂の次世代機:任天堂との過去のやりとりによると、任天堂の次世代機のグラフィック性能はPS4やXbox Oneに近いものが見込まれている追記:これは会話の記憶ミスによる誤認だった模様で、後に修正された
PlayStation版とその影響力
- PS版『コール オブ デューティ』の収益は、Xbox版の2倍以上。
- PlayStationの成功がCoDの成功にもつながった
CoDのサブスクやクラウド版は?
- 『コール オブ デューティ』シリーズのサブスクリプションサービス系は「考えたことすらない」
- アクティビジョンは、サブスクリプションのビジネス価値や収益について前向きな見方をしていない
- 『コール オブ デューティ』をゲームパスに加え、発売初日からプレイできるようにすることに合意はしておらず、それはビジネス的にも良くないと考えている
- 一企業としてのアクティビジョンは『コール オブ デューティ』をクラウドゲーミングサービスに加えることはない
- クラウドで『CoD:モバイル』をプレイするのは、レイテンシ(接続遅延)の面で良い体験とは言えない
マイクロソフトCEOナデラ氏の証言
この日は、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏も登壇し、興味深い証言をしています。
- PS版『コール オブ デューティ』をなくすという選択については、「経済的にも戦略的にも意味がないこと」と否定。PS版CoDは必ずリリースし続けることを請け負う
- この件については、ソニーの吉田憲一郎氏とジム・ライアン氏にも複数回にわたって説明している
- 買収後のコンテンツ内容や独占コンテンツなどについて決定をしているのは、Xbox事業のフィル・スペンサー氏
補足として、同日登壇したNVIDIAのジェフ・フィッシャー氏(ゲーミング事業シニアバイスプレジデント)の証言によると、以前噂されていた通り、NVIDIAはマイクロソフトによるアクティビジョン買収には反対していたそうです。しかし10年契約を結んだことでスタンスを変更したとのこと。
2022年初頭から始まった、マイクロソフトによるアクティビジョン・ブリザード買収をめぐる一連の議論も、いよいよFTCの裁判で大詰めという印象です。「ゲーム業界の競争を阻害するか否か」が争点となっていた本件がどのような形で決着が付くのか、最後まで注目していきたいところです。
MicrosoftによるActivision買収の流れ
- 2022年
- 2023年
- 1月:GoogleとNVIDIAが買収に懸念
- 2月:MicrosoftがNVIDIAとの新たな契約
- 3月:ソニーに対し、10年間のCoDライセンス契約を提案
- 3月:MicrosoftがBoosteroidと10年間の契約
- 3月:英国CMAが暫定判断、「競争を著しく後退させない」
- 3月:日本の公正取引委員会が買収を容認
- 4月:英国CMAが買収を差し止めする結論
- 5月:欧州委員会が買収を承認
- 6月:Microsoftスミス氏が訪英。イギリス抜きで買収完了の可能性示唆
- 6月:米国FTCが買収の仮差し止めを求めて連邦裁判所に提訴
- 6月:FTCによる公聴会(現在)
- 7月24日より:イギリス競争控訴審判所(CAT)による審理(予定)
- 8月2日より:FTCによる裁判(予定)
- タイトル:Call of Duty: Modern Warfare ll(コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア Ⅱ)
- 発売日:2022年10月28日
- 対象機種:PS5/PS4, Xbox X|S/Xbox One, PC(Battle.net / Steam)
Source: CharlieIntel, The Verge
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コメント
コメント一覧 (16件)
なんか現実の裁判とは違う裁判を見てる奴がいるみたいだな
買収してCoD以外は独占しますだと意味ないんだけどなぁ…まーこれで競争が激化するのな没落があるのかは見守るしかないね
MS的には潰す意図があっての買収ってのが裁判では明るみになったけど…
アクティブユーザーの計算の仕方絶対ガバガバだろ
同じ奴でもリログするたびに加算されてそう
モバイルなんかも安定のCoDクオリティだから強制終了しまくるらしいし
スマホキッズおま環とのコンボで大リログ祭やってんだろうな
>PCとPSが同じくらいみたいな書き方だけど明らかにマッチングした時PSマーク多かった記憶あるが?
日本のCoDプレイヤーはコンソール版が多いからだな、マッチングシステム的に近いサーバーから順にマッチするようにしてるから、PC版ももっと多い海外勢とマッチするのが少ないだけ
この感じだと買収はすんなり通りそうだな
今後のCODはxboxオンリーで1年先行配信する感じになるのかねぇ
軽いAPEXすらギリギリなのにスイッチでCoDは無理だろ
モバイルをスイッチに移植する方が可能性ある
そもそもモバイルなら日本でもそこそこ流行っているんじゃないか?